しいたけ園←ブロッコリー

南波典子から『トーキョー・ボディ』共演者である久保優子さんへ送る日々の記録。
子育てのこと、仕事のこと、などなど。

久保さんからのお返事『しいたけ園→ブロッコリー』も、どうぞよろしく。

映画『3人、』見に来てくださった皆さま、ありがとうございました。
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『手なしむすめ』
この日は夫の職場の演劇発表会を観に行きました。HANAPLAY『手なしむすめ』です。夫は障害者施設の職員として働いてまして、この作品ではその施設の利用者さんが出演者、夫は演出家ではないのですが制作過程で色々手伝っていたようで、感想を聞きたいとのことでしたので息子とふたりで観に行きました。

お芝居を観ること自体がとても久しぶりでしたが、かなり面白かったです。夫は作っている立場にいるので色々気になる点があったようですが、私はすごく楽しめました。
出演者の方達はほとんどが車椅子に乗ってらして(そうでない方もいらっしゃいましたが)体の自由がきかず、発話もうまくできない方達なのですが、その場その場でちゃんと生きていらっしゃる、そういう役者さん同士で作る舞台の空気がしっかりとそこに立ち上がっていて、しっかり稽古されてきたのだなあというのがよくわかりました。
『手なしむすめ』というのは昔話で、美しい娘に継母が嫉妬して色々とひどいことをする話だそうです。開演前にパンフレットであらすじを読んでいたので、台詞が聞き取れない部分があっても「多分今は娘の腕を切ってるんだな」なんてことがわかるわけですが、読んでいなければわからなかったかもしれません。でもそれはそれで、能を見てる時と同じような感覚で面白かったです。おおまかな話は事前に知っておいて、あとは目の前に現れるものを楽しめばいい、という。いちいち全部の台詞について何を言ってるかわからなくてもいいのです。ただあまりわからなさすぎるともったいない(発話が不得意な役者さんの印象が薄くなってしまう)感じがするので、そういう時は相手役の方が聞き返したり言い直したりするような台詞にしてどういう登場人物なのかぐらいはわかるといいなあと思いました。あと細かいことで気になったことは、眠り薬を飲ませるシーンでコップが空だったことかな。夫によると「水をこぼさずに運ぶのが困難」ということでしたが、多少こぼれてもいいから水が入っててほしかったな。まあでもどれくらい困難なのか私にはわからないのでなんとも言えませんね。
でもそんな細かいことはあってもとにかく面白かったのです。衣装も素晴らしかったなあ。それぞれの方にとても似合っていたし、ああ、舞台の衣装というのはこういう風に世界をふくらませることができるんだなあすごいなあと思いました。そうだ、そうそう、それが素晴らしかっただけにプラスチックの空のコップが気になっちゃったのでした。

この日のお客さんは私のようなスタッフの家族、あと出演者の方の家族、施設の利用者さん、スタッフさんなどなどでたいへん和やかな雰囲気の会場でしたがもっと色んな場所で上演されたらいいのになと思いました。なかなかこういう演劇は見る機会がない、というか作れる環境が少ないと思うので。障害者だからおもしろい、というわけではなくて障害者でも面白くないものはきっと面白くないと思うのですが、この作品はとても面白かったし、ここでしか作れないものだなあと感じました。

息子は以前お祭りで夫の職場に行った時に、白塗りのチンドン屋の人たちがいて非常に怖かったらしく、この日は「きょうは白いひとはいないよ、かわいいひとだけだよ」と自分に言い聞かせていましたが、到着すると大勢の車椅子の方達に「かわいいなあ〜」と注目されてやはり少し怯えていました。でも開演するとかなり興味深く見入っていて少しも騒がず1時間強の作品を最後まで見ることができました。

そのあとはバスと電車で「おもしろかったねえ」「パパいそがしそうだったねえ」などと話しながら帰ってきました。色んな会話ができるようになったのでなんだか友達と一緒にお芝居を観に行ったみたいだなあと思いました。

夜は帰ってきた夫に感想を述べて、夫からは「あの人はフリーターの役で『しごとがない』って言ってたんだよ」とか「あの人は新聞記者の役だったんだよ」とか「うわさ話をしてたんだよ」とか色々教えてもらい、そう聞くとやっぱり「そうかあ、わかればもっと面白かったんじゃないかなあ」なんて思ったのですが、まあわからなくても大変面白かったです。いい作品を観ました。
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